トラピストビール一覧&テイスティング

2023年1月現在、世界で13か所あるTrappist®の商標を冠したビールを販売しているトラピスト修道院(うち10か所は”Authentic Trappist Product”ラベルを使用)について、本ページで過去に紹介した記事を元に紹介します。

(1)特徴

トラピストビールは、トラピスト会修道院で作られる上面発酵ビールです。トラピスト会修道院(または厳律シトー会)は、世界中で約170か所、日本では7か所あり、祈りと労働を主要な手段として神と人々に奉仕する隠世共住修道会とのことです。

その労働自活の一環として、ビールやチーズなどを生産して販売している修道院もあります。例えば日本にあるトラピスト修道院でもバターやクッキーを生産しており、収益を修道院の維持費などに充てているようです。

今回スポットライトを当てるTrappist®の商標を冠したビールは、13か所のトラピスト修道院で生産されているもので、更にその中でもより厳しいルールに基づいた”Authentic Trappist Product(ATP)”ラベルを使用することが出来る修道院は10か所です。ATP認証を得るには、下記の基準を満たす必要があります。

 

(1) ビールはトラピスト修道院敷地内で、修道士自身もしくは修道士の管理下で生産されなければならない

(2) 醸造所は修道院の第二義的存在でなくてはならず、修道院活動に対して適切な商業活動でなければならない

(3) 醸造所は営利活動を目的としない。収益は修道士の生活費や建物の修繕費に充てられ、残った収益は社会的活動や助けを求めている人々へ寄付されなければならない

 

これらの基準を満たしたトラピストビールには、下図の真ん中にある六角形のロゴを冠することが認められています。

The Brewing Monks: The Trappist Breweries (Part 3) - I Think About Beer

※Spencerは閉鎖、Achelは要件を外れたため現在はATPロゴを冠しておらず

 

私も海外ビール(特にベルギービール)にはまった際に大きな衝撃を受けたのがシメイやロシュフォール、ウェストマールなどのトラピストビールだったこともあり、今でも「海外の旨いビールを教えて」と聞かれれば真っ先にトラピストビールが思い浮かびます。日本のビールと全く違う風味であることに加えて、修道院なのにビールを作っているというサイドストーリーも紹介しやすい要因な気がします。

以下では、それぞれのトラピストビールのなかで市場に出回っている銘柄を中心に、過去のこのサイトで紹介したもののリンクと各醸造所に対して個人的に感じている特徴をざっくり記載します。

(2)トラピストビール一覧(ATP認証あり、稼働中)

@ベルギー

ビールと言えばベルギーが真っ先に思い浮かぶほどのビール大国。その中にあるトラピストビールも有名どころがずらりと並んでいます。ベルギーでも入手しにくいウェストフレテレンを除けば、日本でも比較的入手しやすいのがこの辺りのラインナップです。

① Westmalle(ウェストマール:ウェストマール修道院

どっしりした甘さのダブルと、ジューシーな甘さのトリプルの対比が面白い。ダブルとトリプルは日本でも入手しやすいので、濃厚な風味のベルギービール入門としてもオススメ。

 

② Rochefort(ロシュフォールノートルダム ド サンレミ修道院

無骨で濃厚、全体的にパンチが強めな印象。


Orvalオルヴァルオルヴァル修道院

今回取り上げたトラピストビールとしては少し毛色が違う存在。ドライホッピングによるビターさが強めの風味だが、長期熟成で味が大きく変わることでも知られている。ビール好きの中での評価は非常に高い。1本足打法で成功している醸造所。

 

Chimay(シメイ:スクールモン修道院

味もボトルもオシャレで華やか。トラピストエールという枠を超えてベルギービール入門にうってつけ。シメイ ブルーを様々な樽で熟成したものが毎年限定ボトルとしてリリースされています。

⑤ Westvleteren(ウェストフレテレン:シント・シクステュス修道院

知る人ぞ知る逸品。8と10は特に絶品で、その入手難易度もあってか、各種レイティングサイトでも100点近い得点をたたき出しています。オフィシャルに市場に販売されることは滅多にないので、個人やベルギー国内の酒販店による転売品での入手が一般的。

 

@オランダ

⑥ La Trappe(ラ・トラップ:コニングスホーヴェン修道院

ラインナップが手広なこともあり少し醸造所としての特徴が散漫になっている気もするが、全体的に癖が少なく基本に忠実、さっぱりとした飲み口のものが多い印象。ノンアルコールビールもある。

⑦ Zundert(ズンデルト:マリア・トゥーフラフトゥ修道院

フルーティさが強くまったり濃厚。チョコレート系の風味が強い。地元産のハーブやライ麦を使用しており、スパイシーさやハーブ感に特徴がある。

 

オーストリア

⑧ Engelszell(エンゲルスツェル:エンゲルスツェル修道院

グレゴリアスはどっしりだが、それ以外は軽快寄りの風味が多い印象。オーストリアというドイツ語圏にあるだけあり、トラピストビールとしては数少ないドイツスタイルのラガー(WeisseやZwickl)を生産している。

 

@イタリア

⑨ Tre Fontane(トレ・フォンターネ:トレ・フォンターネ修道院

ラ・トラップと同じく少し個性が薄い印象。トラピストビールとしては軽快寄りだが、コラボビールは濃厚なものもある。

 

@イギリス

⑩ Tynt Meadow(ティント・メドウ:マウント・セイント・バーナード修道院

バランスが良い。個人的には、トラピストエール初心者にどれか1本と言われればティントメドウを選びたいが日本での入手はやや面倒。


(3)トラピストビール一覧(ATP認証なし)

@ベルギー

⑪ Achel(アヘル:アヘル修道院

ミディアムボティで全体的にダークフルーツやチョコレート感が強い。トラピストエールらしい風味を味わうにはうってつけのバランスの良さ。特に度数の高いエクストラは評価が高い。

 

@フランス

⑫ Mont Des Cats(モンデカ:モンデカ修道院

バランスが良いが、個性は控え目。これからに新商品リリースも含めて、モンデカらしさが表れることを期待したい。

 

@スペイン

⑬ Cerveza Cardeña Trappist(カルデーニャ:サンペドロ デ カルデーニャ修道院

最近ダブルやクアドルペルもリリースされ、ラインナップが充実してきた。やや軽快寄りの風味。独特の癖と少し調和がとれていない荒い印象がある。クアドルペルの出来は結構良かったのでこれからに期待したい。


(4)トラピストビール一覧(閉鎖)

アメリ

⑭ St. Joseph's Abbey in Spencer(スペンサー:セントジョゼフ修道院

フルーツビールやIPAなどトラピストとしてかなり変わり種のビールにも手を出していたが、他のクラフトビールとの競合や修道士確保などの問題もあり閉鎖。コアレンジ品については、派手さは控え目で正統派な旨さが楽しめる。

 

(5)オススメ銘柄について

個人的なオススメ銘柄は、下記のようになります。

①初心者にオススメ

日本で入手しやすく、トラピストエールの特徴を掴みやすい銘柄をオススメします。全部ではなく、どれか2つくらい飲めば傾向が分かると思います。

・ウェストマール ダブル

・ウェストマール トリプル

・シメイ ルージュ

・シメイ ブルー

・シメイ ドレー ゴールド

オルヴァル

・トラピスト ロシュフォール 8

②何本か飲んだことがある人にオススメ

飲んだことのある人に偉そうにオススメも何もないのですが、下記は飲むまでの手間(購入や熟成の手間)がかかったりするので、どこかで出会えたら即飲むべき一本と思っています。

・ウェストフレテレン 8

・ウェストフレテレン 12

・シメイ グランド リザーブ(シメイ ブルーのバレルエイジド)

オルヴァル(長期熟成:私は自宅で熟成中ですが、一部専門店で熟成済ボトルを販売していることもあります

 

それでは皆様、よいトラピストビールライフを!