ウォーターフォード バリーモーガン エディション1.1/Waterford Ballymorgan 1.1

(1)特徴

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ウォーターフォード バリーモーガン エディション1.1/Waterford Ballymorgan 1.1

ウォーターフォード蒸溜所

・50%

・1stアメリカンウイスキー樽、アメリカンヴァージンオーク樽、フレンチオーク樽、ヴァン・ドゥ・ナチュレル樽で3年熟成

 

ウォーターフォード蒸溜所はアイルランド南部にある、2015年に設立されたばかりの新興蒸溜所です。閉鎖したギネスビール工場をそのまま使って生産を行っています(勿論一部設備はウイスキー生産の為に入れ替え)。

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ウォーターフォード蒸溜所は”テロワール”をとことん追求した蒸溜所として知られています。テロワール(Terroir)は、フランス語で「土地」を意味するterreに由来し、ワインなどの製品における生育地の地理・地勢・気候による特徴を指すための言葉として使われています。ワインでは昔からテロワールの概念が非常に重要視されていましたが、ウイスキーでは熟成期間くらいしか表記されていない状況でした(ワインやブランデーでは、単に生産者の名前だけでなく、ブドウの品種や生産地が詳しく表記されていることからもわかると思います)。しかし近年はウイスキーの世界でもテロワールの概念が導入され始めており、例えばブルックラディ蒸溜所などは大麦の生産地なども含めて原酒を作り分けており、熟成樽の種類やバッティングした樽情報なども細かく開示しています。

そのブルックラディ蒸溜所で、醸造責任者のジム・マッキュアン氏とともにテロワールの導入に関わったワイン商のマーク・レイニエー氏が、このウォーターフォード蒸溜所の設立者です。蒸溜に使うポットスチルも、ブルックラディ蒸溜所で使われなくなった古い物を持ってきたようです。

レイニエーシと共にウイスキー生産に大きな役割を果たしているのが、農学者のグレース・オライリー氏です。彼女の指揮の下、蒸溜所では100箇所の農場で栽培された多種多様な大麦からスピリッツを蒸溜しており、今回テイスティングする銘柄も単一の農園(バリーモーガン)で作られた大麦を使用したウイスキーです。スピリッツは、多様な樽で約3年熟成されています。ウイスキーの外箱には固有番号が記載されており、蒸溜所ホームページで検索すると、下記のようにとんでもなく細かい情報が出てきます。約3年熟成と書きましたが、正確には3年10か月23日熟成です(笑) 熟成樽の情報の細かさも、ブルックラディやコンパスボックスなどと共通しており、近年のトレンドと言えます。

 

風味は、アイリッシュウイスキーの特徴である3回蒸留ではなく、スコッチと同様の2回蒸溜です。ただアイリッシュらしいすっきりとした風味もあり、アイリッシュとスコッチの中間にあるような印象です。また様々な熟成樽に由来するフルーティな温かさも特徴です。本記事ではウォーターフォードのバリーモーガン 1.1をテイスティングしますが、一緒にバナウアイランド 1.2のテイスティングも行ったので、併せて読んで頂ければ大麦の生産品種や農場ごとに大きく個性が違うことを知って頂けると思います。

 

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(2)テイスティング 

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【香り】
発酵したリンゴ、塩麹、焼き立てのアップルパイ、蒸したバナナ、キャラメル。少しエステル感のあるトロピカルフルーツ香と塩気が特徴的。

 

【味】
滑らかなアップルカスタード、クリーム、ベイリーズ、バター、焦げたオークのビターさも強め。カカオ分高めのチョコレートの粉っぽいビターさや、若干ミントの清涼感やも感じられる。加水してもアップル感やビターさはしっかり感じられ、軽い酒質ながら意外と骨太な風味という印象。

 

【総評】

アイリッシュウイスキーらしい軽快さと、熟成期間の短さ(4年弱)の割にアルコール感が無く、しっかりと熟したりんごの風味とチョコレートっぽいビターさが特徴的。どちらかと言うとロック向きな気もするが、ストレートでも十分旨い。一緒にテイスティングしたバナウアイランドと比べると、大麦の風味はやや控えめで、樽感がより良く出ている印象。