アードベッグ 8年/Ardbeg 8 Years Old

(1)特徴

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アードベッグ 8年/Ardbeg 8 Years Old

アードベッグ蒸溜所

・50.8%

・バーボン樽、リフィルシェリー樽


なんだか今年はリリースが多いアードベッグのコミッティ限定ボトル。アーーーーーードベッグ(Arrrrrrrdbeg)、アードベッグ スコーチ(Ardbeg Scorch)に続いて3本目は、アードベッグ 8年(Ardbeg 8 Years Old)です。

アードベッグ蒸溜所の蒸溜・製造最高責任者を務めるビル・ラムズデン博士が「もし別の宇宙があり、そこにはアードベッグ TENが蒸溜所のフラッグシップとして存在しなかったらどうなるか。もしかしたら、スモーキーながらもシェリー樽でバランスが取られたウイスキーが、アードベッグ蒸溜所のコアレンジの中心になっているかも知れない」と考えたことから作られたものです。

熟成期間はコアレンジ品である5年と10年(TEN)の間に位置する8年。一部サイトでは『シェリー樽で8年熟成させたもの』という記述がありましたが、色合いや風味からいっても、メインはバーボン樽+一部シェリー樽という旧アードベッグ TENに近い構成じゃないかと思われます(そうなると、ビル・ラムズデン博士の言う”別の宇宙”は2000年代の事かな、とか思ったりもしますが余り突っ込まないのが礼儀と言うもので・・・)。

ラベルの表面には大きく『For Discussion』と書かれており、アードベッグ蒸溜所がコミッティ会員の議論を促していることが分かります。次のコアレンジ品に向けての布石のような気もしますが、真意は定かではないです。表に書かれているのは下記のようなテイスティングコメントです。

It has been proposed that there is;

i) An unmistakable smorky Ardbeg intensity

ii) A strong whiff of charcoal and creosote

iii) Curious hints of something vegetal, like fennel and celery mixed with woodsmoke....

DISCUSS!

(参考訳)

i) 紛れのないアードベッグの力強いスモーキーさ

ii) 木炭とクレオソートの強い香り

iii) ウッドスモークをまとったフェネルとセロリのような野菜的な興味深い要素

 

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裏面は更に謎のデザインになっています。

変な格好をしたおじさんがボトルとパイナップルを持って立っていおり、足元でショーティが不思議そうに見つめています。

記載されている文章は下記のようになっています。

Point 1. Congratulations. With this purchase, you've displayed superior taste so characteristic of Ardbeg Comitee Member. 

Point 2. As a fully-fledged Ardbeggian, you are hereby requested to encourage others to familiarise themselves with the full-on flavour of the Ultimate Islay Malt - from nose to finish. In other words, initiate the uninitiated and swell Comittee Members.

Ardbeg Comittee Membership Recruitment Formalities

Instruct would-be Comittee Members in search of bottlings and bonhomie to take an initiation test (see Fig.1). With a bottle in one hand, a pineapple in the other and sporting traditional Islay attire, i.e. tweed cap, hogshead cask and wellies, they should recite these words.

"I hereby pledge my allegiance to the Ardbeg Comittee with all of my body, soul and spirit."

After which they are invited to join the Comittee at ardbeg.com or by using the QR code below.

A.O.B. (Another Outstanding Bottling.)

(参考訳)

ポイント 1. おめでとうございます。このボトルで、アードベッグ・コミッティ会員に相応しい優れた風味を感じて頂けたことでしょう。

ポイント 2. 一人前のアードベギャンとして、究極のアイラモルトの味わいを周囲の人にも広めてください。つまりアードベッグを知らない人を手ほどきして、素晴らしいコミッティ会員にしてあげましょう。

アードベッグ・コミッティ会員募集要項

ボトルと友情を求めているコミッティ会員候補者に、入会テストを受けるように指示しましょう(図1参照)。片手にボトル、片手にパイナップルを持ち、ツイードの帽子、ホグスヘッドの樽、長靴といったアイラ島の伝統的衣装を身につけて、次の言葉を唱えるのです。

「私はここに、体・魂・精神のすべてをもって、アードベッグ・コミッティに忠誠を誓います」

 

"Initiation test"は、組織などに入ってきた新入りが行うテストのことです。と言っても必ずしも堅苦しい物ではなく、例えば大学の新入生が部活に入った時に「新入生は応援歌を覚える」みたいなものから「○○に行って▲▲を取ってくる」「■■をしながら踊る」と言うようなイベント的なものも含まれています。アードベッグの裏に書かれているのもこういう類のもので、「アードベギャンになるために、アイラ島らしい恰好をして、ウイスキーを飲んでアードベッグに忠誠を誓おうぜ」というジョークですね。筆者はアイラ島に行ったことがありますが、流石にこんな人はいませんでした(笑) アードベッグに忠誠を誓っている人は世界中に沢山いる気はしますが。

今回は5年と10年(TEN)、あと写真には無いですが旧アードベッグTENとも別日に比較テイスティングをしました。5年やTEN、旧TENのテイスティングコメントは以前の記事に記載があるので割愛します。こう言っちゃなんですが、今回みたいな比較テイスティングすると、既に飲んだことのあるボトルも以前に感じた風味と違っていたりするので、人の味覚は適当なもんだなと感じたので、参考程度でお願いします。

 


(2)テイスティング

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アードベッグ5年、8年、10年(TEN)の比較。ワクワクしすぎて8年を注ぎすぎました。色合いはTENよりは明らかに濃く、5年と同じくらい。旧TENと比較すると8年の方がやや濃かったです。
 

【香り】

オレンジのようなやや甘みのある柑橘、きもも、杏、黒糖とフィー、ミルクチョコレート、ウッドスモーク、フェネル、タール、微かにトロピカルフルーツ。加水するとバニラも出てくる。

5年のような灰っぽさや乳酸感は無いが、黒糖やフルーツのニュアンスは近い印象、シェリーの割合は8年の方が少ないように感じる(5年の方がこもったような甘い香り)。TENと比べると柑橘感は共通するがもっと甘みのある柑橘(グレープフルーツと言うよりオレンジ)、フローラルさの代わりにシェリー樽由来のフルーツが強いがリフィル樽なので上品。旧TENは結構近いが、度数の違いもあると思うが力強さが8年の方が強く、切れ味がある(旧TENの方が円やか)。

 

【味】

シャープな口当たり。蜜、黒胡椒のスパイシーさ、灰ぽさはなくやわやかいウッドスモーク、バニラ、塩キャラメル、オレンジ、桃、チョコレート、アニス、コーヒー豆、微かにユーカリ。余韻はややビターなオークやローストしたハーブ。加水するとスパイシーさが控えめになって、フルーツシロップのような甘みがより円やかに感じられる。

5年より熟成感があり円やか、ピート感や灰っぽさは控えめ、甘みの複雑さも8年が上。TENと比べるとピート感やシャープな柑橘、コーヒーのビターさは控えめ、フルーティさは8年の方が上品かつ複雑。旧TENと比べると、シロップ的な丸みのある甘さやスモーキーさは控えめ、スパイシーさが強め。

 

【総評】

5年よりはシェリー樽の影響は少なめもそのぶんバランスが良い。柑橘以外のフルーティさが感じられ、スモーキーさもややマイルドな印象。現コアレンジ品では5年とTENの間と言うよりTENとアンオーの間くらい、旧TENと比べるとよりシャープな印象。個人的な好みだと旧TEN≧8年=TEN>5年くらいの印象(開栓後のタイミングとかでも違ってくるのであくまで今日の個人的な感想です)。8年とTENは方向性が違うので評価がしにくいが、この8年も非常に良い出来でした。かなり興味深いディスカッションが出来た気がします。ご馳走様でした。