ブルックラディ オンラインテイスティング@アイラフェス2021/Bruichladdich Masterclass Tasting@TIME TRAVELLERS, Fèis Ìle 2021

(1)特徴

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https://twitter.com/Bruichladdich/status/1396566401406676992より

 

2021年5月30日にオンライン開催された、ブルックラディ蒸溜所の2021年アイラフェス(Fèis Ìle 2021)テイスティングイベント、TIME TRAVELLERS/Masterclass Tastingのレビューです。

ブルックラディ蒸溜所が再開されて20年の歩みを、アダム・ハネット蒸溜所長と振り返るラインナップとなりました。今年のブルックラディ蒸溜所のアイラフェスボトルの一つに”Laddie Origins/ラディ・オリジン”があり、これはブルックラディ蒸溜所の歴史を彩る13のカスク(12種のビンテージ、6種の麦芽種、9種のカスクタイプ)をバッティングしたものですが、本テイスティングイベントではこのうち特に興味深い6つをピックアップしたとのことです。

www.bruichladdich.com

下の写真は当日のテイスティングの様子です。後日にYouTubeとかで録画を見ながらのんびりテイスティングしようと思っていたのですが、蓋を開けてみたらその場限りのイベントっぽかったので、慌ててテイスティングしつつ、ボトル情報をメモりました(結局ブルックラディ蒸溜所のアイラフェスサイトにアップされたので、今でも見ることができます)。

 

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下の写真はTwitterから。今回のテーマは、ブルックラディ蒸溜所の20年の歴史を振り返る「タイムトラベラー」。それにちなんで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンが登場し、盛り上がっていました。

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https://twitter.com/Bruichladdich/status/1399117386104647680より

 

下記がアイラフェスのサイトで、映像視聴やグッズ購入ができます。

community.bruichladdichdistillery.com

(2)テイスティング

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①2003年蒸溜/初のオーガニックバーレイ使用原酒/2ndフィル・バーボン樽で17年熟成/57.1%

ブルックラディ蒸溜所のテロワール理念の原点ともいえる一本。初めてオーガニック大麦を使用して蒸溜・熟成させた原酒(#1660)。

 

【香り】

レモンやオレンジの柑橘、蜂蜜、カスタード、白やピンクのフローラルさ、ミント系のハーブ、ペッパー、やや塩気。加水するとかなり軽く薄い風味になり、草やフローラルさが繊細になる

 

 【味】

マシュマロ、砂糖やカラメル、フルーツパンケーキ、塩気、ペッパー、フローラル。柔らかい甘さから、焦がしたようなビターさに変化していく。加水すると、麦芽感がより素直に感じられる

 

②2004年蒸溜/初のアイラバーレイ使用原酒/1stフィル・バーボン樽で16年熟成/58.4%

アイラ島のKentraw農場、レイモンド・スチュワート氏によって栽培されたアイラ産麦芽を使用。現在定期リリースしているアイラバーレイシリーズの源となる一本。

 

【香り】

レモングラス、レモン、アプリコット、杏、パイナップル、芝生やよもぎ、ミント、マジパン、パン、乾いたオーク。加水すると、乾いたバニラとオレンジ、メントール、ヘザー

 

【味】

スパイシーで切れ味のある口当たり。レモネード、芝生、ハーブ、乾いたオーク、オレンジ、ミネラル、若干の塩気、ローストしたレモンピールのビターさ。加水すると、ビターさやオーク、ハーブ感が増す

 

③2009年蒸溜/初のベアバーレイ使用原酒/1stフィル・バーボン樽で12年熟成/59.8%

オークニー産のベアバーレイ(古代種大麦)を使用したもの。これも定期リリースされているベアバーレイボトルの源となる一本。ベアバーレイの栽培は2007年から始まっているのものの、本サンプルが現在貯蔵庫に残されている最古のものとのこと。

 

【香り】

どっしりした麦芽感、湿ったオーク、花の蜜、微かにバニラ、桐ダンス、ハーブ、ボンドや石鹸ぽさ、トロピカルフルーツ、青いバナナ。加水すると、砂糖やマシュマロのような甘さが増すが、独特なベアバーレイ感はやや控えめになる

 

【味】

非常にクリーミーで、しっかり飲みごたえのある麦芽感と穀物感。湿ったオーク、ミルキーな練乳や蜂蜜、若干のスモーキーさ。加水すると、甘い蜂蜜感やマジパン、ローストしたナッツ

 

④2011年蒸溜/バイオダイナミック農場産大麦使用/1stフィル・バーボン樽で9年熟成/60.9%

ウォーターフォード蒸溜所が積極的に取り組んでいるバイオダイナミック農場(自然に優しいエコシステムを採用した農場)の大麦を使用。イングランドのYatesbury House農場で作られた大麦を使用した一本。そもそもウォーターフォード設立者がブルックラディ蒸溜所出身という事で、今でも交流はあるとのこと。今流行のサステナブルな製品の源となるものです。

 

【香り】

ミネラル、パイナップル、ネクタリン、チェリー、リンゴ、塩キャラメル、ティラミス、エルダーフラワー。加水すると、クリーミーさとフローラルさ、オーク感がより明瞭に

 

【味】

オイリーでミルキー。練乳や花の蜜、フルーツポンチ、リンゴ、ローストパイナップル、カラメル。加水すると、非常にきれいに花の蜜のフローラルさと甘さが開いた。余韻はコーヒーやオークのビターさ。

 

⑤2014年蒸溜/リージョナルトライアル/1stフィル・バーボン樽で6年熟成/61.5%

ブルックラディが2013年ころから開始した、生産地域によって大麦にどのような影響が出るのかの実験として作られた原酒。スコットランドのLothian、Aberdeenshire、Black Isleの3か所で大麦を収穫し、それぞれの気候や土壌がウイスキーにどのような影響を与えるのかを実験したもの(現在進行形)。

 

【香り】

バター、バタークッキーやビスケット、乳酸、ヨーグルトの上澄み、湿ったオーク、キャラメルポップコーン、芝生、リコリス。加水するとカスタードやバニラ感がより出てくる。

 

【味】

骨太でバタリー。 バター、カスタード、オーク、塩気、微かに煮込んだアップル、ややアルコール感がある。加水すると、よりバター感が増し、塩気や麦芽感も明瞭に

 

⑥2005年蒸溜/同蒸留所初の3回蒸溜した原酒/1stフィル・バーボン樽で15年熟成/69.3%

ブルックラディ蒸溜所と言えば、他のスコッチ同様に通常は2回蒸溜だが、本サンプルは3回蒸溜して作ったもの。3回蒸溜と言うとアイルランドやローランドの専売特許のようなきらいもあるが、ブルックラディ蒸溜所でも3回蒸溜を行っており、様々な原酒作り分けの試行錯誤を繰り返しているとのこと。

 

【香り】

クリームパン、カスタード、菓子パン(スイートブール)、白い花のフローラルさ、、微かにオークや麦芽 、アップルパイ。加水するとアップルカスタードやドライフルーツ感が強くなる

 

【味】

軽快で透明感のある風味。カスタードクリームとバニラ、蜂蜜、フローラル、チョコレート、草っぽいハーブ、オーク。加水でやや塩気が増す。

 

(3)総評

まさにブルックラディ蒸溜所のテロワールの原点(ラディ・オリジン)を存分に楽しめたセット。同じバーボン樽熟成でも、大麦種や育成地、蒸溜方法が違うと、こうも差が出るのかとテイスティングしてワクワクが止まらなかった。個人的には④>⑥>③>①>⑤>②の順で好み(かつ興味深かった順)だったが、勿論どれも素晴らしい出来で、当日のコメントでも結構感想が分かれていた。④は加水時の香りの開き方の美しさ、⑥は3回蒸溜により透明感のある風味、③は大麦が持つパンチ力が素晴らしく、この辺はイコールに近い。アイラフェス限定ボトルは、これら6つも含めて計13のカスクをバッティングしたものだが、むしろ小瓶に小分けして売った方が良いんじゃないかとも思える。

今後もこのような体験型イベントは継続してほしいし、日本限定でも開いてほしいと思える、素晴らしい体験でした。