(1)特徴
・白州 12年 & 18年/Hakushu 12yo & 18yo
・白州蒸溜所/サントリー
・ともに43%
・ホワイトオーク樽、バーボン樽、シェリー樽
白州蒸溜所は、サントリーがウイスキー事業50周年を記念して1973年に設立されました。場所は山梨県の白州、「サントリー天然水 南アルプス」の生産を行っている場所でもあります。
同じサントリーのシングルモルトである山崎と比べると発売が遅かった分、世間の知名度はかつて低く、ハイボール専用のウイスキーという扱いでした(こう言うとハイボール好きの人は気を悪くするかも知れませんが、現在のサントリー角やトリスのような位置付けでした)。しかし2000年代後半から世界的品評会で金賞を受賞し始めて、ジャパニーズウイスキーブームにも乗って、近年では山崎に劣らない人気を誇っています。実際に、白州のうち比較的入手可能だったノンエイジ(NA)、12年、18年のうち、12年は安定的な供給が困難となり休売、18年も入手が困難な状態となっています。25年になるともはや幻の域です。
風味は、サントリー自身が「森香るウイスキー」と宣伝するように、ウッディさが特徴として挙げられます。そのほかにも、アメリカンオーク樽由来と思われるミント感や、バーボン樽由来の蜜のような甘みも特徴的です。
今回のテイスティングでは、白州12年と18年のサンプルボトルを購入できたので、比較テイスティングをしました。下記は山崎12年と18年のテイスティングですので、興味のある方はこの記事も是非ご覧ください。
(2)テイスティング
※写真はすべて、左が白州12年、右が白州18年
①白州12年
【香り】
フレッシュな青リンゴ、木の香り、キャラメル、ミント、和梨、ヘーゼルナッツ。
加水すると、リンゴ、カスタード、ミントの香りがよりフレッシュに立ち上る。
【味】
花の蜜、オレンジ、焦がした木、麦芽感は山崎ほどで無いが微かに感じられる。微かなスモーキーさ、ハーブ。山崎と違い塩気も感じられる。加水するとややビターになり、ハーブとスモーキーさが立つ。
②白州18年
【香り】
12年の乾いたフレッシュな木というよりやや鬱蒼とした森の中の木の香り、メープルシロップ、アップルパイ、シナモンやクローブ系のスパイス、バニラ。加水すると、焦がした蜜とキャラメル感が強くなる。
【味】
スコッチで感じるオークとは少し違う滑らかな木の風味、焦がしたメープルシロップ、バター。スモーキーさは12年より強く感じる(スモーキーさは熟成で落ち着いているはずだが、他の要素が上品に円くなっている分、むしろはっきり感じられた。ただし刺々しいスモーキーさというより、より力強く調和している印象)。加水すると、バターと樹液、ハーブ、ウッディさが際立つ。
③総評
確かに「森香る」というキャッチコピーがしっくりくる風味。12年はフレッシュな新緑の森、18年は雨上がりのやや鬱蒼とした森という印象。ウッディな風味も、スコッチでよく感じる樽由来のオーク感とは少し違い、もっと生い茂った緑を感じさせる風味。蜜の甘さも、メープルシロップのような樹液系の甘み。
白州蒸溜所では、山崎蒸溜所と違いミズナラ樽熟成はそこまで多くないとの話も聞くので(少なくとも存在はするようだが)、この要素がどこから生まれるのか。公式には、72時間近い長時間の発酵を2種類の酵母(ブルワーズ・イーストとディスティラーズ・イースト)で行っており、ブルワーズ・イーストがスピリッツの段階で複雑さとコクを生み出しているとの事。また発酵を木製ウォッシュバックで行うことで、木樽内の乳酸菌の働きによるエステル感やクリーミーさに繋がっているとも言われている。何れにせよ、不思議なリラックス感を得られる一杯。
12年と18年での立ち位置は山崎に近い。12年はフレッシュでストレートでもハイボールでも主張が個性がはっきり、18年は円やかさが増してストレートでじっくり飲みたい風味。どちらが良いというより、シチュエーションや気分に応じてそれぞれ楽しめる。原酒不足が解消し、手軽に楽しめる日が来ることを切に願うばかりです。