アードベッグ テン 新旧ボトル/Ardbeg Ten New&Old Bottle

(1)特徴

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※左が旧ボトル、右が新ボトル

アードベッグ テン 新旧ボトル/Ardbeg Ten New&Old Bottle

アードベッグ蒸留所

・700mL、46%

 

アードベッグ蒸留所はスコットランドアイラ島にある蒸留所で、1798年ウイスキー生産を開始し、1815年から政府公認の蒸留所としての生産開始しました(そのためボトルなどにはEstablished 1815と表記されています)。1996年まではハイラム・ウォーカー社に保有されていましたが、当時のウイスキー冬の事態に耐え切れずに閉鎖(閉鎖前にも生産していない年もあったほどの冬の時代)。翌1997年にグレンモーレンジィ社に買収されて生産を再開、2004年にはモエ・ヘネシールイ・ヴィトン(MHLV)社に合併されて今に至っています。

 

味わいはアイラらしい癖の強烈なピート由来のスモーキーさと、その反面甘くフルーティーな軽い口当たりが特徴です。アイラのみならずウイスキー愛好家からの人気は凄まじく、限定品は争奪戦となり、プレ値での取引となることが多い銘柄です。

 

今回はアードベッグの代表的な銘柄であるアードベッグ テン(アードベッグ 10年)で、1996年の閉鎖前に蒸留・樽詰された原酒を用いた旧ボトルと、1997年以降に蒸留・樽詰された新ボトルの比較テイスティングを行います。旧ボトルは2005年にボトリング(1995年以前の原酒を使用)、新ボトルは2018年ボトリングされたものです。旧ボトルでは、ラベル表面の”TEN”の文字が大きい事から”Big TEN”と呼ばれたりもします。

 

旧ボトルのデザインや判別法については下記のサイトを参考にしました。こういうサイトがあるところからも、熱狂的なファンがいることが伺えます。

 

(2)テイスティング

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※左が旧ボトル、右が新ボトル

アードベッグ テン 旧ボトル

【香り】

ヨード感があるやや甘臭いピートスモーク、レモンやオレンジの酸味、バーボン樽由来のバニラの甘みに加えて、イチジクや巨峰やマンゴーのようなシェリー樽由来と思われる甘みも感じられる。アーモンドや焦がしたハーブ様な香りも。ピートスモークは新ボトルより温かく、やや控えめ。

 

【味】

胡椒やチリのようなスパイシーさとピートスモークが爆発。バニラの甘みに加えて、マンゴーやブラウンシュガーのような甘みも広がる。余韻はエスプレッソやチョコレート、焦げたハーブ、オレンジピールの砂糖漬けのような甘酸っぱさ。新ボトルよりスパイシーかつ甘みのある余韻。

 

アードベッグ テン 新ボトル

【香り】

ヨード感のあるアイラらしいピートスモーク、レモンやライムの酸味、ライチの甘酸っぱさ、バニラの甘い香り、ローストしたナッツ、エスプレッソ、灰っぽさとハーブ。旧ボトルと比較すると、より柑橘感が前面に出た、シャープで爽やかなピートスモーク。 

 

【味】

胡椒のスパイシーさとピートスモークが爆発。バニラの甘みや柑橘の酸味のバランスもいい。アルコール刺激はあるが、口当たりは軽く、余韻はエスプレッソやチョコレートのビターさ、レモンピール、焦がしたハーブのようなスモーキーさが続く。 柑橘のシャープな口当たり、バニラっぽい甘さは旧ボトルより強め。

 

③総評

骨格となるヨード感のあるピートスモーク、柑橘感、バニラの甘さ、チョコレートやエスプレッソのビターさなどは共通。違いは、おそらくシェリー樽由来と思われるフルーツやブラウンシュガーのような甘みが旧ボトルにある点。色合いも旧ボトルの方がやや濃く、微かに赤みがかっている。その影響もあり、新ボトルの方がよりシャープで磯臭いスモーキーさ、旧ボトルは甘臭く円やかなスモーキーさに仕上がっている。飲み口も柑橘感が前面に出ている新ボトルに対して、旧ボトルは甘さが増している印象。どちらが旨いというものではないが、個人的には、普段飲みやハイボールなら新ボトルの方が好み、たまに食事とのペアリングや就寝前にまったり飲むなら旧ボトルと言ったところか。もしバーなどで見かける機会があれば、ぜひ比較してみて欲しい。現在のアードベッグのラインナップにありそうでない味わい。