キルケラン 8年 カスクストレングス 2021年リリース/Kilkerran 8yo Cask Strength 2021 release

(1)特徴

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・キルケラン 8年 カスクストレングス 2021年リリース

/Kilkerran 8yo Cask Strength 2021 release

・グレンガイル蒸留所

・59.8% ※2021年2月リリース時の最終的なアルコール度数は56.9%

・オロロソシェリー樽熟成

 

グレンガイル蒸留のシングルモルト、キルケランの8年カスクストレングスの2021年リリース版です。2017年以降毎年リリースされており、2017・2018年がバーボンカスク熟成、2019年(日本での発売は2020年)がリチャー・オロロソシェリー樽熟成でした。前回のリチャー・オロロソシェリー熟成についてのレビューは下記をご覧ください。以前から評価が高い蒸留所だったものの、特にこの2019/2020年リリース物の評価がすこぶる高かったことで、一躍ウイスキー好きにその名を轟かせました。

 

5本目のリリース(2017年はバッチ違いで2本)となる今回はコロナの影響で発売がやや遅れており、2021年初旬のリリースとなる予定とのことです。この2021年版は、前回同様オロロソシェリー樽熟成ですが、リチャーされていない樽を使用している点で違いがあります。今回はテイスティングイベントにて先行発売されたサンプリングを用いてレビューを行います。

 

(2)テイスティング

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左が2021年リリース、右が前回リリース品。色合いは前回の方が濃い。


【香り】

濃厚だがやや乳酸やサワー感のある爽やかなシェリー、樽由来のオーク香、ミントやハッカの様なバーブ香、灰っぽさとピートスモーク。シェリー特有の硫黄っぽさやゴム臭もかなりする。ガツンとシェリーの濃厚な甘みが立ち上る前回2020年リリースとガラッと変わり、シェリー樽特有の硫黄感が増し、シェリーの濃厚な甘みはやや酸味・炭酸感のある爽やかな甘みに(フルボディの赤ワインがスパークリングになった感じ)、その分背後にあるオークやハーブ、ピート香がよりバランスよく感じられる出来に。少量加水すると柑橘感も出てきて更にバランスが良くなり、シェリーボムだった前回と全く違った側面が見えてくる。

 

【味】

ワクシ―で濃厚なシェリーの甘み、キルケランらしい麦芽の甘み、ピートスモーク、燃やしたハーブや牧草、シェリー樽由来のゴムや硫黄っぽさも、塩気も強め。少量加水で、麦芽の甘みとシェリーの甘みのバランスがぐっと良くなり、余韻のややビターなハーブ感と相まって、円やかで心地良い余韻。余韻もナッツやハーブ、ペッパー感があるが非常にドライな口当たりで、前回リリースのどこまでも濃厚なシェリーが続く余韻と違った趣。

 

【総評】

同じシェリー樽熟成と言っても、前回2020年リリースとは全くの別物。シェリー熟成のゴムや硫黄感が苦手な人はNG(もしくは開栓後しばらく置くとぐっとよくなる)、濃厚な甘みも控えめなので、前回リリースをイメージして買おうと思っている人も注意が必要。樽をリチャーすると甘みが増したり、硫黄感が薄まったりすると聞いたことはあったものの、改めて勉強になった。いやはや全然違う。ゴム感も含めて濃厚なシェリー熟成が好きな人、キルケランらしい麦芽感やオーク感が好きな人には、前回よりオススメできる。個人的には前回品が一歩上だが、シェリー以外のキルケランらしい要素が色々感じられるバランスの良さは一飲の価値あり(グラスの残り香は今回リリース品の圧勝でした)。開栓後の変化も含め、ボトル買いで一本飲むなら、今年の方が楽しめそうな気もする。早くも次回の8年カスクストレングスも楽しみになってきました。