アードナムルッカン ファースト・エディション AD/09.20:01/Ardnamurchan AD/09.20:01

(1)特徴

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以前の記事でご紹介した、アードナムルッカン蒸留所の第一弾ウイスキーです。10月上旬頃から、700mLのフルボトルでの販売も開始されています(英国から順次、日本では未発売)。今回紹介するのは第一弾ウイスキー発売を記念して作られたテイスティングセットです。1本ずつ紹介しようかと思ったのですが、面倒なのでまとめて紹介します。

 

ボール紙の小箱に入っています。First EDの文字が中央に印字されています。

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開けると小冊子とサンプルボトルが4本入っています。左から順番に、①販売されるファースト・エディション、②シャンパン樽熟成原酒、③シェリー樽熟成原酒、④バーボン樽熟成原酒です。

 

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色合いはこんな感じ。

 

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各サンプルボトルの特徴は以下の通りです。ADはエディション、09.20:01は2020年9月瓶詰のエディション01、CK.○○○は熟成させたカスク番号、その後ろの日付は蒸留日と思われます。

 

①ファースト・エディション ウイスキーAD/09.20:01)

アードナムルッカン蒸留所の第一弾ウイスキー。ピーテッド・アンピーテッドの原酒を、5年以上様々な樽で熟成させた一本。原酒・樽構成は、バーボン樽:シェリー樽=65%:35%、ピーテッド原酒:アンピーテッド原酒=50%:50%です。シェリー樽としてはオロロソシェリー樽とペドロヒメネスシェリー樽が使われているようです(テイスティングセットにシャンパン樽熟成が含まれていますが、これも構成原酒に含まれているかどうかは不明)。アルコール度数は46.8%。

 

②アンピーテッド、シャンパン樽熟成(AD/CK.364-17/11/14:構成原酒?)

フランスのル・メニル・シュル・オジェにて作られているポール・ローノワ社のシャンパン熟成に使用した樽にて熟成されたシングルカスクウイスキー。原酒はアンピーテッド麦芽を使用したものです。①の構成原酒の一つと思われますが、どこにも記載が無いのでイマイチ不明です。アルコール度数は58.2%。

 

③ピーテッド、オロロソシェリー樽熟成(AD/CK.670-16/10/15:構成原酒)

ピーテッド原酒を、アメリカンオーク及びヨーロピアンオークのオロロソシェリー樽にて熟成されたシングルカスクウイスキー。①の構成原酒としてはオロロソシェリー樽の他にペドロヒメネスシェリー樽も使用されているようですが、こちらはサンプルには含まれていませんでした。またアンピーテッドのシェリー樽熟成物もあるとは思われますが、今回のサンプルには含まれておらず、①の構成原酒に用いられているかどうかは不明です。アルコール度数は59.2%。

 

④ピーテッド、バーボン樽熟成(AD/CK.371-30/07/15:構成原酒)

ピーテッド原酒を、アメリカンオークのバーボン樽にて熟成されたシングルカスクウイスキー。アンピーテッドのバーボン樽熟成物もあるとは思われますが、今回のサンプルには含まれておらず、①の構成原酒に用いられているかどうかは不明です。アルコール度数は59.5%。

 

(2)テイスティング

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①ファースト・エディション(AD/09.20:01)

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【香り】

やや甘臭いピート香、潮風漂う磯の香り、グレープフルーツやオレンジのような酸味、洋梨、ライチ、蜂蜜やバニラの甘さ。香りの系統としてはポートシャーロットやタリスカーに近いが、ピート香はそれらに比べればぐっと穏やか、甘さはシェリーというよりバーボン由来か。ピートと潮風、フレッシュな酸味と蜂蜜感が特徴的で、ハイランド系というよりアイランズ系の香り。

 

【味】

飲み口は軽く、口当たりは柔らかいが、アルコールやピートの刺激も適度にある。海辺での焚火のようなピートスモーク、フレッシュなレモンやグレープフルーツ、金柑、薄めた砂糖シロップ。加水すると蜂蜜や薄いバニラ感、牧草のような。後味はコショウのようなスパイシーさと炭っぽいビターさ。ロックやハイボールにも向いている味のように感じる(まだ試してないけど)。

 

②アンピーテッド、シャンパン樽熟成(AD/CK.364-17/11/14)

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【香り】

爽やかな白ブドウの香り、オーク、青りんご、オレンジ、洋梨、熟れていないバナナ、トロピカルフルーツ、ココナッツ。加水するとカドが取れて、ココナッツとオーク、フレッシュなフルーツの香りで、焼き立てのフルーツケーキのような感じ。

 

【味】

オーク、レモン、蜂蜜やキャラメル、バニラの甘さ、牧草。後味はほろ苦いカカオと蜜の甘さ、塩っ気。爽やかな甘さと木の香り、潮気のバランスが良い。樽香(ヨーロピアンオーク)の主張が強め。加水すると苦みなども無くなるが甘みや酸味も飛んで、少しサッパリしすぎの気がする。トワイスアップまでは不要か。

 

 

③ピーテッド、オロロソシェリー樽熟成(AD/CK.670-16/10/15)

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【香り】

干しブドウ、オーク、ワックス、すみれの花、砂糖シロップ、革、メントールやシンナーのような清涼感。潮気と甘臭いピート香はあるものの、そこまで強い癖は無く、むしろブレンドした①の方が強いくらい。樽感が良く出ている。少し加水すると香りが一気に開いて、上品なシェリー香が全開になる。キルケラン8年のシェリー熟成物に近い香味。

 

【味】

円やかで温かい口当たり。干しブドウ、プルーン、クローブ、砂糖漬けのすみれ、完熟ミカン、青りんご、穏やかなスモーキーさと潮気、紅茶。後味は若干の灰っぽさとオレンジピールのビターさ。加水すると樽感が強くなる。

 

④ピーテッド、バーボン樽熟成(AD/CK.371-30/07/15)

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【香り】

ヨード感も含んだピートスモーク、潮風、蜂蜜、バニラ、青りんご、和梨、ライム、ミント、オーク。①では感じなかった薬品感も含んだ磯臭ささにフレッシュな柑橘と蜂蜜の香り。オークの香りもあるが、バーボン樽っぽいバニラ感はそこまで強くなく、フレッシュ。加水しても味の骨格は変わらず、香味のバランスが素晴らしい。

 

【味】

蜂蜜、洋梨、グレープフルーツ、オレンジ。飲み込むと一気にピートの煙とヨード感が広がる。スモークチーズ、干し草、潮気と柑橘の皮のビターさ。後味は甘いバニラとハーブ、スモーク。味わうと、香り以上にバニラ感が出てくる。オーク感はアードナムルッカンの特徴なのだろうか、結構主張が強い。

 

(3)まとめ

これまでスピリッツとして毎年販売していた1~3年熟成物は甘いシェリー感が強かったことから、熟成が進んで濃厚なシェリーやフルーティーさが強い風味になるのかと想像していたが、意外とスモーキーで潮気がたっぷりある、アイランズ系の仕上がりになっていてやや驚き。シェリーも上品でドライ(今回のサンプルボトルに含まれていないペドロヒメネスシェリー樽の甘さは、バーベキュースモークのアクセントとなっている)。樽感もアメリカンオーク・ヨーロピアンオークともに特徴がはっきり出ていて面白い。

 

以前紹介したテイスティングマップ(下記)で行くと、Talisker・Springbank・Oban・Highland Parkの中間地点(ややTaliskerやHighland Park寄り)くらいの風味。フルーティーな風味はハイランド系だが、ピーティーさと潮気はアイランズ系に近い。

 

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これが定番商品になるという訳でなく、これから様々な配合で商品を出していくこととなると思う。原酒の幅が広く、かつそれぞれの個性が強いので、今後シェリー樽のみ、バーボン樽のみ、シャンパン樽のみ、ピート有り無しと、個性的で多様なラインナップが出てくることが待ち遠しい。熟成が進み、より懐の深さを感じさせる蒸留所となることを期待。

 

(4)リンク

liquor366.hatenablog.com

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