アイランズとアラン10年/ Arran 10y

 1. アイランズとアランの特徴

(1) アイランズについて

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アイランズはハイランド地方の島の総称です。南はグラスゴー近くのアラン島、西はタリスカーで有名なスカイ島、北はオークニー諸島にあるハイランドパークなど、各島々に蒸留所が点在しています。 

(2) アイランズウイスキーの特徴

アイランズウイスキーは、上述の通り点在した様々な島で作られているため共通した特徴は少なく、ただ一般的なハイランドウイスキーと比較すると個性豊かな銘柄が多いです。全体的には潮気を感じる銘柄が多く、代表的なものではスカイ島で作られているタリスカーが挙げられます。

(3) アランの特徴

アランはアラン島のロックランザ蒸留所で作られているウイスキー(2019年に姉妹蒸溜所のラッグ蒸留所と区別するために改名、それ以前の名前はアラン蒸留所)。アラン島にはロックランザ蒸留所とラッグ蒸留所がありますが、それぞれのオーナーは一緒です。アラン島は、グラスゴーとキャンベルタウンの間に位置する島で、面積は約427平方キロメートル(種子島くらい)、人口は約4600人です。キャンベルタウン同様、かつては密造酒製造が盛んで50もの蒸留所がありましたが、アメリ禁酒法などのあおりを受け1837年に唯一残っていたラッグ蒸留所が閉鎖。1995年にアラン蒸留所が開設されるまで約150年もの間蒸留所が途絶えていました。

1995年のアラン蒸留所の開設もまた、一筋縄ではいきませんでした。かつてシーバスブラザーズ社やペルノリカール社の取締役まで務めたハロルド・カリーが、定年退職後に個人的な醸造所を持ちたいとの想いから、当時蒸留所が無かったもののウイスキー製造に最適な場所であったアラン島に目を付けたことが始まりです。しかし当時はウイスキー冬の時代。有名蒸留所でも資金繰りに四苦八苦する中、当然ながらアラン蒸留所の為の資金は簡単には集まりませんでした。そこでハロルドの息子ポールが、当時としては画期的なクラウドファンディング的な仕組み(出資者を募り、出資者は以後製造された商品を割引・優先的に購入できる)を使い資金を集めます。こうして1994年に資金が集まり、翌1995年についにアラン蒸留所が開設されました。当時ハロルドは70歳。すさまじいパワーですね。

余談ですが、ハロルドは若いころから様々な分野で活躍しており、1944年6月のノルマンディ上陸作戦時の功績から、レジオンドヌール勲章を授与されております。またフットボールの大ファンで、1970年代にはセントミレンFCの会長を勤め、若きアレックス・ファーガソンをマネージャーに任命しています。その後マンチェスター・ユナイテッドの英雄となるファーガソンはここから本格的な指導者としての道を歩み始めています。残念ながら2016年、91歳にてハロルドは亡くなりましたが、まさに天寿を全うしたというに相応しい人生ではないでしょうか。 

 

2. アラン10年の特徴

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アラン10年はアラン蒸留所のフラッグシップ商品です。現在は写真右側のようにラベルがリニューアルされています。アイランズウイスキーですが、潮気はそこまで強くなく、柔らかな潮気とスモーキーさ、フルーティーさの調和がとれた味わいが人気です。

3. アラン10年のテイスティング

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【商品情報】

・アラン10年 / The Arran 10 year

・46%

・3500円前後

 

【香り】

穏やかな潮気とフルーティーさの調和。青りんご、メロン、オレンジ、ブドウ、プラム、バニラ、バター、レザーや樽香

 

【味】

オイリーで若干の潮気、柑橘、麦芽、生姜、蜂蜜、シェリ

 

【フィニッシュ】

麦芽感と樽感。シェリーの甘みも残る。 

 

【総評】

今回は旧ボトルのテイスティング。潮気やシェリー感、バニラ感のバランスが良い一本。スコッチウイスキーの色々な要素を含んでいて、かつ飲みやすい。家のみにも最適。