アイラ島とラフロイグ10年/Laphroaig 10y

 

1. ラフロイグの特徴

(1) アイラ島について

ラフロイグは、スコットランド北西のアイラ島ラフロイグ蒸留所で作られているウイスキーアイラ島ウイスキーの聖地と言われることもある位ウイスキー生産が盛んで、非常に特徴的な風味のウイスキーを造っている事でも有名です。

アイラ島は、イギリス北西部に位置する淡路島位の大きさの島で、人口は約3200人です。アイラ島には蒸留所が10か所あります。

 

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Islay map

ブナハーブン/Bunnahabhain:ピートが少ない製品が主力の変わり種

②カリラ/Caol ila:柑橘を伴う爽やかなピート感

③キルホーマン/Kilchoman:アイラ産原料に拘る新鋭。バランスが良い。

ブルイックラディ/Bruichladdich:ノンピート~スーパーヘビーピートまで多様

ボウモア/Bowmore:柔らかで落ち着いたピート香

ラフロイグ/Laphroaig:溢れ出るピートの癖

ラガヴーリン/Lagavulin:重厚な酒質に甘い香りを伴うピート感

アードベッグ/Ardbeg:強烈な煙臭さと透き通るような軽快さ

⑨アードナッホー/Ardnahoe:2018年蒸留開始

⑩ポートエレン/Port Ellen:1983年閉鎖、2020年再開予定。上品なピート香で、残存するボトルは超高値で取引

(2) アイラ島ウイスキーの特徴

ウイスキー製造過程の麦芽乾燥の際にピート(泥炭)を使用する事から生まれる、ピート香が大きな特徴と言えます。ピート香は、煙臭さや薬品(ヨード)っぽさ、磯臭さを含む香りで、その独特な風味から「Love or Hate(大好きになるか大嫌いになるか)」と言われるほどです。

ピートが使われているスコッチウイスキーは他にもありますが、アイラ島のピートは、海藻由来のヨード香や磯臭さに特徴があり、他のスコッチウイスキーと一線を画す風味となる原因となっています。

(3) ラフロイグの特徴

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(写真引用:Tripadvisor)

ラフロイグは、アイラ島ウイスキーの中でも1,2位を争うくらいピート香が強いウイスキーを生産しており、特にヨード香が強烈なことから「正露丸のような香り」と例えられるほどです。その為「ラフロイグこそが最上」という熱狂的なファンから、「ラフロイグだけは飲めない」というウイスキー好きまで、まさに「Love or Hate」を地で行く蒸留所と言えます。イギリスのチャールズ皇太子は前者で、その為ラフロイグは王室御用達ウイスキーとしても認定されており、「アイラモルトの王」とも呼ばれています。

2. ラフロイグ10年の特徴

ラフロイグ10年は、実は三種類異なる銘柄が存在します。

1つ目は本場イギリス等向けのアルコール度数40%のもの。日本では「並行輸入品」と書かれているものがこれに相当します。

2つ目は日本向けに調整したもの(ラフロイグの親会社はサントリー)でアルコール度数43%のもの。日本では「正規品」と書かれているものです。

3つ目はマニアックですがカスク・ストレングス(樽から瓶詰する際に加水調整をしていないもの)版。これはボジョレーヌーボーのように毎年違うバッチで販売されていますが、日本では正規販売していないため、並行輸入でしか入手できません。

ラフロイグ蒸留所の造るウイスキーの全般的な特徴としては、強烈なピート臭さの後ろにバーボン樽由来の甘いバニラ風味を感じる、キレのある飲み口が挙げられます(シェリー樽熟成やワイン樽熟成、オーク新樽熟成も行っていますが、メインはバーボン樽熟成です)。

ラフロイグ10年は、蒸留所ラインナップの中では一番の定番で代表選手。ピート香とバニラの甘みのバランスが素晴らしく、ラフロイグ10年全銘柄の中での人気も一番だと思います。マッカランやグレンリベットなど、香りが華やかなウイスキーの場合、熟成年数が長ければ長いほど風味が豊かになるので好まれる傾向があるのに対して、アイラウイスキーは短い熟成年数の銘柄の人気が非常に高いです。これはピート香は熟成が進むにつれて弱くなる傾向があるため、ガツンと来るピート香を楽しみたい愛好家にとっては、短熟の方が良かったりするためです。

 

3. ラフロイグ10年のテイスティング

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【商品情報】

Laphroaig 10年(並行輸入品)

・40% / 700mL

・値段は4000円前後

 

【香り】

スモーキー。煙というより病院の中の薬っぽく引き締まった感じ。波打ち際の磯と潮の香り、奥から甘いバニラと微かな柑橘。加水すると甘い香りが前面に出てくる。

 

【味】

オイリー口当たりもアルコールとピートの刺激が下に来る。海藻や土っぽいヨード感と苦み。その後に甘いバニラと酸味。加水するとバニラの甘さが際立ち、ヨード感よりもスモーキーさが主張してきて、口当たりは絹のように円やかなになる(苦みはあまり出ず)。

 

【フィニッシュ】

磯や泥っぽいヨード感、が長くまとわりつく。ただクドさがある訳ではなく、シャープな後味。

 

【総評】

癖の強いピート香、甘すぎないバニラ、切れ味の良い味わいは最高。心躍るというより、落ち着く香り。癖が強いから食事と合わないと言う訳ではなく、磯臭い魚介やチーズとの相性は良い(アイラ島では生牡蠣にかけて食べる事もある)。初心者厳禁とも言われるが、個人的には初めに一口試してほしい一品(これを初心者がボトルで買うのは間違いだが、バーの半ショット位なら、むしろウイスキーの奥深さが感じられて良いのではと思う)。