キルケラン 16年/Kilkerran 16 yo

(1)特徴

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・キルケラン 16年/Kilkerran 16 yo

・グレンガイル蒸留所

・46%

・バーボン樽96%、マルサラワイン樽4%

 

2020年秋に発売された、グレンガイル蒸留所の新しいコアレンジ(かつ過去最長熟)であるキルケラン16年。バッティングした樽は、12年ではバーボン:シェリー=70:30だったものが、16年ではバーボン:マルサラワイン=96:4と全く違った構成に。2019年発売のシェリー熟成8年カスクストレングスの衝撃があったので、「何でシェリー熟成物をバッティングしてないんだよ」と突っ込みつつ、新星16年のテイスティングを行いました(4%のマルサラワイン樽というのはカスク一つ分をバッティングしたとのこと。またスプリングバンク同様、16年物の樽構成は毎年変わるみたいです)。

 

ちなみに今回のテイスティングは、英国Whisky Exchangeが主催したVirtual Whisky Show 2020で使用されたもので、この他にヘビリーピーテッド・バッチ3(2020年発売)、8年カスクストレングス(2021年発売予定)、マデイラカスク熟成サンプル(マデイラ樽で10年熟成後、バーボン樽で6年熟成;発売予定なし)の3本を含む5本セットでした。これについては後日テイスティングレビューを挙げようかと思っています。テイスティングイベントでの配信映像はYouTubeでも見ることができます。

 

(2)テイスティング

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【香り】

色合いは12年とほぼ同様。オーク、ミントが入ったレモネードやシャンパン、ビスケット、麦芽、雨上りのフレッシュな草や花の香り、バニラの甘み。12年と比較するとオーク感はやや大人しめ、レモン系の柑橘香がメインである事は一緒だがやや乳酸ぽさが混じったレモネードのニュアンス。シャンパンのようなフレッシュでフローラルな草花の香りやバニラや蜂蜜の甘みもぐっと増していて、上品で華やかな仕上がりになっている。ピートスモークや潮香は12年と比べてやや大人しめで、フローラルさとよく調和している(12年も麦芽や樽感と一体になっていてバランスが良い)。

 

【味】

ややオイリーな口当たり。レモンやオレンジ、青りんごの酸味、バニラと蜂蜜の甘み、黒胡椒のスパイシーさ、ハーブミックス、オーク、塩気。12年同様のしっかりした麦芽に少しトースト感が風味が付加された印象。塩気やヨード感はぐっと抑えられており、スモーキーさも12年よりより柔らかく開く印象も、余韻の長さは12年より長い。12年で感じたやや粉っぽいビターさではなく、ハーブの爽やかなビターさを伴った余韻。

 

【総評】

12年の延長線上にある風味で、より華やかで重厚になっている。ほぼバーボン樽原酒に由来し、シェリー樽原酒がバッティングされていない影響か、同じキャンベルタウンのスプリングバンクで味わえる香水と呼ばれるほどの多層的な広がりではなく、徹底的に麦芽の風味を深堀りしていった印象。マルサラワイン樽の影響も正直そこまで強くなく、シャンパンのようなフルーティーさやロースト感が若干出ている程度か。そのため、キルケラン12年が好きだった人は満足できる出来と感じる反面、シェリー熟成の8年カスクストレングスが好きだった人からするとやや期待はずれかもしれない。スプリングバンクの兄弟としてどう進化していくのかこれからも楽しみだが、蒸留所としての目指す方向性が垣間見える一本。素直で実直な弟と言ったところか。樽構成も毎年変わるとのことなので、同じ16年でも様々な変化を楽しめることを期待したい。